「えー!!英二と同室!?」



     咲花は枕とタオルケットを持って来た英二を見て思わず叫んだ。



    「これもボディガードとしての役目なんでね。」

    「どーせ10万に釣られて引き受けた仕事のくせに。」


     咲花の言葉にぐっとつまる英二。




     やっぱり言わなきゃよかった…




     英二は心底後悔した。

     先刻の話の続きで咲花が英二に何故こんな面倒な仕事を引き受けたのか聞かれた時、咲花にせがまれ渋々答えたのだ。
     当然咲花は激怒し、先刻からずっとこの調子なのだ。流石の英二も困り果てる。



    「俺、此処に寝るよ。」

     英二はふてくされている咲花を無視して、咲花が寝るベッドに一番近い、長めのソファに座り、枕とタオルケットを置いた。
     咲花は怒って英二に背を向けていたが、内心とても嬉しがっていた。











      □ □ □





     まず始めに、咲花はとてつもなく我が儘である。

     それは前にもあげたように、咲花が王女として小さい頃から大事に育てられて、望みはなんでも叶えてもらっていた、なに一つ不自由のない生活を送っていたからだ。



     咲花が日本に来て2日目、彼女の我が儘パワーは、はやくも爆発した。




    「どっか行きたい〜!」

    「どっかですか?」

    「そう、どっか。」

    「ディズニーランドとかですか?」

    「それ、前に行った。」

    「富士山を見に行きます?」

    「別に山に行ったってつまんないもん。」



     先刻からずーっと昨日の男達が咲花を宥めていた。

     なにも変わらない状況に、見るに見兼ねた英二が口を開く。


    「じゃあ、俺ん家に来るか?」

    「行く!」



     返事は即答だった。





     二人はリムジンに乗り込み、鷹護邸へ向かった。

     薄く化粧までしてウキウキしている咲花の隣で、英二は昨日と同様外を眺めていた。