「どーせ10万に釣られて引き受けた仕事のくせに。」
先刻の話の続きで咲花が英二に何故こんな面倒な仕事を引き受けたのか聞かれた時、咲花にせがまれ渋々答えたのだ。
英二はふてくされている咲花を無視して、咲花が寝るベッドに一番近い、長めのソファに座り、枕とタオルケットを置いた。
それは前にもあげたように、咲花が王女として小さい頃から大事に育てられて、望みはなんでも叶えてもらっていた、なに一つ不自由のない生活を送っていたからだ。
「どっかですか?」 「そう、どっか。」 「ディズニーランドとかですか?」 「それ、前に行った。」 「富士山を見に行きます?」 「別に山に行ったってつまんないもん。」
なにも変わらない状況に、見るに見兼ねた英二が口を開く。
「行く!」
薄く化粧までしてウキウキしている咲花の隣で、英二は昨日と同様外を眺めていた。 |