「!」
きゅっと英二は唇を噛んだ。
「え…?」
驚く咲花。
組員は、ギッと激しい怒りを込めて独狗蛇徒を睨んだ。
「確かそなたは銃使いであったな…フッ…目が見えないのであれば、得意の銃も使えまい。」
「貴様ぁ!!!」
主を侮辱され完全に我を失い、殺気立った組員が独狗蛇徒に襲い掛かる。
独狗蛇徒はそれを見て愚かそうに笑うと、組員の拳が当たる直前でフッと消えるように避けた。
残像を強烈な拳が突き抜け、空を切る。
その瞬間、組員の首の付け根に独狗蛇徒の手刀が見事に当たった。
そのまま倒れる組員。
一瞬の脳震盪だったが、何故か体が動かない。
「体が思うように動かないであろう。」
そんな組員の心を見透かしたかのように、独狗蛇徒が言う。
「人の身体には『ツボ』というモノがあってな。先刻の手刀によって押された『ツボ』は、金縛りになるツボ。しばらく身体の自由がきかないぞ。その間に―…」
独狗蛇徒はずっしりと組員の上に座ると、手を肩の所まであげ、指の先を尖らせるように構えた。
「お前には死んでもらうとしよう。」
「!!」
成す術もないまま、凶器に近い独狗蛇徒の手が迫る。
しかしもう少しで組員の心臓に突き刺さるという所で独狗蛇徒はなにかに気付き、攻撃を止めてその場から飛び退いたのだ。
次の瞬間、ガウンガウンという爆音がしたかと思うと、独狗蛇徒が今まで座っていた組員のすぐ近くでコンクリートの地面が少し抉れた。
「止めろよ。」
それを撃ったのは英二だった。
真っ直ぐ独狗蛇徒がいた所に銃口を向けている。
「何故だ!お前は眼が見えないはずだ!」
「そんだけでかい声出してりゃあ、耳だけで何処にいるかわかるよ。」
「そんなこともわからないのか?」と呆れたように言い、英二はとんとんっと右手の人差し指で右耳を指差した。
独狗蛇徒の顔に怒りの表情があらわになってくる。
「おのれぇ〜!!憎き鷹護の血よ、ここで終わらせてやる!」