気がつくと、英二は真っ暗な暗闇の中にいた。
     他にはなにもない、永遠と続く闇。



     ここは…?



     朦朧とした意識の中で、英二は今、この状況を把握しようと努めた。



     そうだ。
     俺はヤツラの中の誰かに後ろから頭を殴られて…



     そう思ったが、頭には痛みも血もなければ、殴られた傷などまったく無い。



     夢…?



     そう思うのが自然だろう。となると、早く目覚めなければならない。

     英二の目の前で咲花が掠われたのだ。
     それを思い出すと、なんだか無性に英二の胸がムカムカする。



     とにかく、早く起きないと…



     スゥっと英二の姿がどんどん透けていく。
     『本体』が目覚めようとしているのだ。


     そして、英二の姿はそのまま闇に溶けていった。





     +++





     『目覚める』と、まだ暗闇だった。
     しかも今度は自分の姿さえ見えない程の深い闇。



     まだ夢の中か…?



     いや、英二には確かに『目を開けている感覚』はあるのだ。
     しかし目の前が真っ暗でなにも見えない。

    「坊!坊!!」

     近くで自分を呼ぶ組員の声が聞こえた。
     幸い、体はなんとか動かせる。

     起き上がろうとした時、英二の頭に声も出ない程の激痛が走った。

    「っ…!!」

    「坊!大丈夫ですかい!?」

     英二は起き上がるのを諦め、その痛みが鎮まるのを待ち、

    「おい、お前ら…夜なら電気ぐらいつけろ…」

    と、息を荒くしながら言った。

    「どうしたんっスか?坊。今は昼間っスよ?」

    「嘘つけ…真っ暗で何も見えないじゃないか…」





    「何言ってんスか?天気もいいし、眩しいくらいっスよ。」





     英二には彼等が何を言っているのか、さっぱりわからなかった。
     英二には、確かに『何も見えない』のだ。



     おかしい。



     英二の胸を微かな不安がよぎる。





     嫌な予感がしたのだ、その時から。





     そんな英二の異変を英一はいち早く察知した。

    「英二、お前まさか…!!」