闇に散る桜
空に咲く花に感じたモノは…
儚き、青いハル。
『 』 『 』 『 』 『 』
見た事もない景色。 そこに俺はいた。
花が咲いていた。
名も知らぬ花。
…女が、一人そこにいた。
誰だお前は?
『 』
けれど、けれどそれは声にならず。
ここは何処だ?
何か、知っているのか?
声にならぬ。
唯、唯、喚く程の声すら届かぬ。
ふと…女が振り向いた。
妖艶な表情、淡い桜色の着物。
女は…俺を見ると微笑んだ。
微笑む女が掠れていく。
さらり、さらりと
何処に行く?
手を延ばした。
掠れていく“其れ”に触れると…それは桜の花弁へと変化を遂げた。
「っ……!!」
瞼が重い。
「…夢…?」
そこは、見慣れた景色、住み慣れた屋敷…。
俺は月明かりに照らていた。
闇に散る桜の女は、いなかった。
「幻影…か…」
其処には何もなく
月影に光る桜があるだけだった…。
妙な、幻影だった。
ふと…
庭の下弦櫻を覗く。
女が、いる気がした。
「…気が触れたのか?…俺は…」
あれは唯の幻影だと言うのに…
あれ、が気になって仕方がなかった。
「唯一つでも…声が届けば良かったのに…」
闇に散る桜に…
次は
何処に行けば会える?
そう…
其れだけ、でも。
END